最終更新日:3月5日。

昨日ラピスの戦闘シーンをブログに載せたところ、
ブログで確認した方が推敲しやすかったので公開。
追記:推敲前後でごっちゃになった……。(-ω-;)
今ブログに載ってるのは推敲前です。

追記の追記:ブログから修正するのはアウト。←今回の教訓。
せめてwordでここの文を修正してねというメモにしとくべきだった。

ブログで修正→メモ帳に写してwordにコピペ→余計な修正が必要になるので手間がかかる。
ブログで読みながらwordで修正する→OK!(๑˃̵ᴗ˂̵)و

いつまでもお絵かきサボるわけにはいかないので、今日中に終わらせたい。

3月8日:
https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=9328174
投稿しました。追記の文を若干修正してます。

■お絵かき■
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■次回予告■
20180306








■近況■
りょなけっと10申し込みました。


現在推敲中です:絵で言うと下書き状態。

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魔法戦士ハルティエルA 第四話:【三勢力の戦い】



『先日起きた空霜市の大量失踪事件――そして今回▲▲街の住民が化け物へと変貌した事件。解説の武山さん、これらの事件には何らかの関係が――』

「ふっ! ふっ!!」

 

 【春川さつき】宅のリビングで一人、TVを流しながらトレーニングに没頭しているさつきの親友【夏陽裕子】。当たり前のように居座っている彼女だが、彼女と秋の魔法戦士である【秋山しずく】は空霜市の失踪事件後、両親が旅行中である【春川さつき】の家に住んでいた。しかし今は彼女たちの姿も、無心病事件から居候をしている【ラピス・ノート】の姿も見えない。

 

「アタシだって! アタシ……だって!!」

 

 実は他の3人は空霜市のパトロールに出かけおり、彼女は1人だけ留守番を任されたのだ。この意味を汗で流すかのように一心不乱でトレーニングをしていた。

 

「ナツ姉、そんなに激しくすると身体壊すよ? はいタオルと飲み物」

「冬人――。……悪い、サンキュー」

 

 さつきの弟【冬人】の気遣いにより火照った身体をクールダウンさせていく。

 彼【春川冬人】は一般人であるが魔法戦士の事情、現在の状況を把握している人物だ。姉と同じような優しさを持ち、家事もこなせるしっかり者でもある。そのため彼女たちの良き相談相手でもあり、陰のサポート役を担っていた。

 

「……なぁ冬人。アタシってやっぱり頼りないのかな?」

「どうしたの急に? らしくないね」

「いや、その……色々あってな」

「まあ3人の中じゃナツ姉が一番臆病だよね。気は強いくせに、オバケとかホラー映画とかダメだし」

「う、うるせぇやぃ……」

「でもボクも――きっと姉さん達もみんな頼りにしてると思うよ。なに言われたのか知らないけどさ、ナツ姉が姉さんの傍にいないと心配でしょうがないよ」

「冬人……」

 

 そんな言葉に心が軽くなった時だった。身体全身が震え、ズシンと重力のようなプレッシャーが襲いかかる。

 

「! ナツ姉、これって……」

「ああ。冬人にも分かるんだな」

 

 その威圧感は一般人である冬人でさえ感じられるものだった。裕子の記憶に蘇る胸を抉られるようなプレッシャー。

先日空霜市に現れたエクスプロイット最高幹部【グレリーグ】が出てきた時と同じ――もしくはそれ以上の威圧感を感じ取っていた。

 

「冬人、絶対家から出るなよ」

「ナツ姉、待って! どこに行くの! ナツ姉!!」

(アタシはラピスよりも弱くて足手まといかもしれない。それでも……仲間が危険なのを指咥えて見てられねぇよ!)

 

 静止する冬人の声はもう聞こえない。彼女は考えるよりも先に走り出していた。

 

■2■

 

 市街地をパトロールしていたハルティエルは美しい黄緑髪のロングヘアーをなびかせる、見ただけで男達を虜にしそうな凛々しい女性の魔物と遭遇していた。一度感じたら忘れることの出来ない強大な力にハルティエルの身体が硬直していく。

 

「久しぶりだねハルティエル」

「ハイ……ローズ」

 

 いま目の前に現れたのはエクスプロイット最高幹部であり今は全ての指揮を取っている【四法柱のハイローズ】だった。彼女が放つ禍々しい魔力に心を飲み込まれそうになる。

 

(まさか最後の四法柱であるハイローズが出てくるなんて……。それに――)

 

 視線を隣にズラすとそこには神話のメデューサを想像させるような蛇の髪を持つ魔物【ベリトア】も立っていた。

こちらの魔物もパトロールで出くわすような魔物とは違う……。魔法戦士歴が長い彼女だからこそ、相手の強さ・危険を本能で察知していた。

 

「安心しな。私はあんたと一対一で戦いたいだけさ。こいつはそれを邪魔する奴を排除するために連れてきただけ……。そう――」

「ハル! 無事か!!」

「な、なっちゃん!!」

「こういう奴とかね」

 

 2対1――という状況に先ほどまで家にいた少女、もとい夏の魔法戦士【エテナイト】が到着した。ハイローズは予定通りと言わんばかりの素振りで蛇の魔物に合図する。同時にその意図は魔法戦士たちにも伝わった。

 

「なっちゃん、どうして!」

「悪い。黙っていられなかったんだ。でもなハル……四法柱クラスは無理だけど、あっちの魔物は任せてくれ。すぐに倒してハルを助けに行く」

「あっ? 私をすぐに倒すだって? 上等じゃないか」

 

 エテナイトの何気ない発言に眉を動かすベリトア。やる気になったのか、だらけた身体をシャキっとさせエテナイトに指で合図する。

 

「なっちゃん……」

「あっちもその気みたいだな。心配すんな、すぐに戻るよ」

 

 ハルティエルの頭に手を乗せて笑顔を向けた後、エテナイトはベリトアと一緒に市街地の外へと消えていった。

 

「そっちの魔法戦士は理解が早くて助かるよ。さあハルティエル、一対一と行こうじゃないか」

「っ……」

『ハルちゃん! ハルちゃん! 聞こえる!? ハルちゃん!?』

(えっ? アキちゃん?)

 

 一対一が始まろうとしたその時――今度はオーブからスカイオータムの連絡が入った。明らかな焦りの声にハルティエルの心拍数も上がっていく。

 

『ハルちゃん! 違うの! ハイローズが来たこともやばいけど、違うの! それを予想してた奴がいるのよ!! いま、本当にやばいのは――!!』

「えっ!?」

 

 未だ戦闘態勢に入らず、青空に視線を配るハルティエルにハイローズは苛立ちを覚え始めていた。

 

 

「まずい! まずいよ! どうしよう……!」

 

 ハルティエルに事を伝えたあとも焦りが消える様子はない。

 今回起きた【それ】に一番動揺していたのは公園にいる【スカイオータム】だった。彼女はいま数十匹の魔物に囲まれているのだが、彼女の心はここにあらず――他の魔法戦士たちへ飛んでしまっている。

 

『落ち着きなさいしずく! いま起きた状況を一番理解しているあなたなら分かるでしょ! 2人を助けられるのはあなたしかいないわ!』

「リーチェ」

『私たちの前に現れた魔物は時間稼ぎだろうけど、あなたがそんな状態じゃ負ける事だってあるのよ! 今は目の前の敵に集中しなさい』

「うん、ごめん……!」

 

 スカイオータムの使い魔として過ごしているリーチェの渇で今いる公園へと意識を取り戻した。そのまま精神を集中させ、取り囲む魔物たちを流水の魔法でなぎ倒していく。

 

(バカだ私は――。なっちゃんは危険に突っ込むタイプって分かっていたのに、何で一緒にいてあげなかったの……。無事でいてなっちゃん、そして――)

 

 

「なるほどなるほど、まさかグレリーグを倒された状況で大将自ら戦いにくるとは……それは流石に予想出来なかったですね」

 

 他の二カ所と違い、裏通りはかなり落ち着いている。最後の1人――冬の魔法戦士【ラピス・ノート】は白に近い水色のサイドポニーを揺らし、眼前にいる相手に余裕の笑みをこぼした。

 

「それで、ハイローズをハルちゃんの足止め役に使って――その間にボクを捕らえるのがお前の狙いですか? カルティクス」

 

 ラピスが対峙していたのは以前ハイローズと同格の地位にいた【元四法柱のカルティクス】。彼はクールな表情の裏から出る喜びの雰囲気を隠そうともしない。もう獲物が捕まったかのような上機嫌ぶりを見せていた。

 

「その通り、裏でハイローズの動向を監視していた分オレの方が一枚上手だったな。このチャンスを逃すほどオレはバカじゃない……。が、あまり手荒な真似もしたくないんでな。大人しく一緒に来てくれないか?」

「冗談言わないでくださいです。確かにハイローズの出現はボクの失態ですね。でもやっぱりお前はバカですよ」

「なに?」

「ボクの所にお前が来てくれて良かったです。ハルちゃんを傷つけたお前はこの場でボクがやっつけてやるです!」

 

■3■

 

やんちゃな少年のように元気いっぱいの少女【ラピス・ノート】。

 足には水色のブーツ、華奢で小さい体躯だが凹凸のある身体は男心をくすぐるプロポーションをしている。ぷりんとしたラインに張り付く下地の黒に水色を縫い合わせたインナー、そして膨らみのある上からは紫色のエナメル系胸当てが装着されていた。そして白い襟に太ももをやや露出させるプリーツスカートは、まるでアニメに出てくる変身ヒロインのようだった――。

 そして陰り一つない正義感に満ち溢れた瞳は、しっかりと銀髪の魔物カルティクスを捉えていた。

 

「さっさとお前を倒してハルちゃんを助けに行き、ハイローズも倒すです。それで空霜市の異変は万事解決です。こんなチャンス、ボクも逃すつもりないですよ?」

 

 カルティクスの言葉に合わせ挑発的な発言を連発する少女。彼女の素振りに落ち着いた様子をしているが、僅かながら眉間をピクピクと震わせていた。

 

「くっくっくっ……その姿同様、頭まで子供みたいだな。言っただろ? オレはここで確実に貴様を捕らえる。見せてやろう、これがお前対策に作った魔物だ!!」

 

 カルティクスの叩きつけた黒いカプセルが割れ、周囲が黒い霧に包まれる。

そして霧が晴れた視界に映ったのは――

 

「ぴぃ♪」

 

緑色をしたワーム、まるで芋虫を連想させる可愛らしい姿をした魔物だった。足で踏み潰せそうなくらい小さな姿に愛らしさすら覚える。

 

「なっ――」

「なんだこの魔物はっ!?」

 

 緩んだ頬から出るより先に、カプセルを叩き割った本人がいの一番に開口していた。出てきた魔物に一番動揺しているのも彼自身だった。

 

「バカな……! ゲロリクの奴、オレはラピス対策の魔物を――ここは千載一遇のチャンスだからと言ったはず……。確かにある程度の魔物を作れば後はオレが何とかすると言ったが、こんなザコを用意しろとは言ってないぞ」

「ぷぷっ、あはははははははは!!」

 

 とうとう緩んだ頬を押さえきれず笑い出してしまう。

 

「おま、お前――今までは部下に作らせていたようですね!! ボクを捕まえるために用意した魔物がそれって……あははははははは!! だからこないだは氷対策の魔物とか短絡的な魔物を用意したのですね! そもそも千載一遇のチャンスに事前の打ち合わせもしてないなんて、やっぱりバカなんじゃないですか?」

「こっの、クソガキ……!!」

 

 腹を抱えて爆笑するラピス。能力察知に長けている2人は気づいていた。この魔物は外見通り、強い魔力を感じない。それこそパトロールで見かける魔物や、こないだ戦ったサンプルNの方が遥かに強いだろう。

 

「あははははははは!! はぁ、はぁ!! これはボクが千載一遇のチャンスだったようですね! 覚悟してくださいですよっ!」

「ぐっ……! ゲロリクめ、帰ったら覚えておけよ!」

「ぴぃ? ぴぃ……」

「そんな可愛らしい姿をしてもダメです! ハルちゃんが待ってますし、さっさと終わらせるですよ!!」

 

 開口と同時に氷のつぶてを放つラピス・ノート。そのつぶては相手の出方を窺うような小さいつぶて。本当に姿通りの魔物であればこれで倒れるだろう。

……実は彼女は笑いながらも油断はしていなかった。先日の敗北も力ではなく能力によるもの――作った者が同じならサンプルN同様、この魔物も何らかの特徴があるはず……。

 そう高を括っているラピスは慌てるカルティクスと違い、無自覚ながらどこか警戒をしていた。

 

「ぴぃ?」

 

 彼女が放った25個のつぶては魔物に当たる直前に霧散して消えてしまう。やはり何かしらの能力は持っているようだ。

 

(なるほど、魔法を分解する防御系の魔物でしょうか。こいつでボクの魔法を防ぎ、カルティクスが戦う――といったところですかね?)

「甘いですよっ!」

 

 ラピスは大きく身体を振りかざし、先ほどのつぶてよりもはるかに大きい氷のランスを魔物に放つ。今度は霧散しきれず、僅かにだがワームの身体を切り裂いた。

その裏でカルティクスのマントも貫いていたが彼女の眼中にない。魔物に集中している。。

 

「ぴぎゃぁ!!」

「およ、的が小さいから外れてしまいましたか……。それなら――コールドブレス!」

 

 続いて氷の霧を放ち、周囲全体を攻撃する。霧の中には氷の刃が形成されており、魔物を切り刻む魔法なのだが――

 

「ぴぃ?」

「ぐおおおおお!!」

 

 ダメージを受けているのはカルティクスだけでワームはピクリともしない。効いてる様子もなかった。

 

「ふぅ、やはり氷耐性は持っているようですね……。ですが氷耐性だけで勝てるボクじゃないですよ! ガトリングダーク!」

「ぴぎゃぅう!!」

「ぐはっ!!」

 

 ラピスの十八番である【ガトリング】魔法。先ほどのつぶてに大きく魔力を込めた弾丸を発射する。個数は5~10発程度だが、一発一発が重く並の魔物なら一撃で倒す事が出来る。

 こないだラピスが倒した氷耐性の魔物もこの魔法だ。

ワームにも数発直撃し――痛みでのたうち回っていた。氷魔法より遥かに効いているのが分かる。

 だが――この一撃がラピスに言いようのない不安を与えていた。炎天下のなか、どこか寒気を覚える彼女。

 

「こいつ……」

(くっくっくっ……なるほど。ゲロリクの奴、面白い魔物を作ったな)

 

 ガトリングの流れ弾を治療したカルティクスは少し離れて魔物の様子を観戦する。

 それからもラピスはより威力を強めた氷魔法と闇魔法で圧倒するが、とうとう倒すことはできなかった。

 しかし魔法の連撃は闇雲に放ったものではない。ある事を確信するために放った魔法――。確信を得たのか、攻撃する度に曇っていた表情に明るさが戻った。

 

「なるほど、氷耐性ではなく【魔法耐性】をもった魔物ですか……。それで氷に関してはちょっと多めに耐性を持っている。そしてこのワームでボクの魔法を防ぎカルティクスが戦う、そんな感じですかね」

「…………ほう?」

「ほう、じゃないですよ? この魔物の分析は終了したです。せっかく作ってくれた魔物もお前が観戦を決め込んだせいで台無しですね」

「強がるなよ。オレが観戦決め込んで安心してるくせに」

「さっきまで流れ弾にボコられてた奴の言うセリフですかそれ」

 

 ラピスは喋りながら、特大の魔法――大きな銀色の槍を具現化する。今までとは明らかに違う、とどめを刺すための一撃を形成した。

 

「【物質】――【物理魔法】なら耐性あっても防げないですよ。後ろにいるカルティクスごと、貫いてやるです!」

 

そして――

 

「これで終わりです! アイアンランス!!」

 

 とどめの一撃が放たれた。

 

バクゥ!!

 

「えっ?」

「無能なのは、どっちだったかな?」

 

■4■

 

『ラピスの能力はハルティエルと互角に近い――。そしてうちにはラピスの天敵を作る事はもちろん、十分な魔物を作るだけの魔力タンクもない。カルティクス様はサポートしてくれると言ったが、こんな状況でどうやってラピスを対策すれば良いんだ……』

『じゃから――何もしなければ良いのじゃよ』

 

 ラピス対策の魔物を作れと命じられ、頭をうねっていたゲロリク。そんな彼の前に現れた老人の魔物は不気味に笑っていた。

 

『どういう事だブレイン?』

『そのままの意味じゃ、相手から貰えば良いのじゃよ。読むのはラピスの能力ではない。行動・思考じゃ』

『…………あっ!』

 

 

 緑色の体躯をした魔物【リターンワーム】。攻撃魔法を分解し、それを糧に成長する魔物。自身にはそれ以外の能力がないため、一発目から強い魔法を放たれれば即効でやられてしまう。

 

「あっ……あぁ……」

 

 今まで見下していた魔物を見上げているラピス・ノート。先ほどまでの笑みは一切なくなり、全身が警鐘を鳴らしていた。

 愛らしい姿のワームはもういない。ラピスの物質魔法を口火に変身したリターンワームはぐちゅるぐちゅると粘液の雨を降らせている。体躯はラピスの数倍、指一本入れるのがやっとに見えた口も今では彼女を呑み込めてしまいそうなほど成長していた。

 

「最初は戸惑ったがすぐに分かったよ。こいつはお前の行動を読んで作られた魔物――お前が分析するために放つ牽制の魔法で徐々に成長していくタイプだってな。

ここまで思い通りに動いてくれるとは――こないだの敗北でビビッたか?」

 

 その言葉で察する。カルティクスがラピスの魔法を食らっていたのも魔物の耐久力を確認するためのもの――全て彼の掌の上で踊らされていたのだ。ラピスは悔しさに身体を震わすが、一呼吸ついて意識を切り替えた。

 

「ふっ、ふふふ……。もう勝ったつもりですか? ただでかくなっただけの魔物にボクが負けるわけないです」

「くくく、バカが。ここからはオレも――」

 

 カルティクスが腰の剣を抜こうとしたとき、リターンワームが首を振った。ぴぃぴぃ鳴きながら左右に振っている。その意味を理解したカルティクスは笑みを浮かべ、鞘に剣を戻す。そしてやり取りを見たラピスはわなわなと身体を震わせ、一気に魔力を溜め始めた。

 

「分かったよ。今回はお前に任せてやろう」

「ぴぃ♪ ぴぃ♪」

「ぎっ!!」

 

 ラピスは魔法の力で一気に跳躍――魔物の上空を取るとそのまま両手で光球を作り出し、ワームの口目掛けて発射した。

 

(ボクの魔法を吸収したのならもう氷と闇属性は効かないと考えた方が良さそうですね。ここからは無属性で――えっ!)

 

 ぶちゅう!!!

 

「あっ、あぁぁぁぁああ!!!」

 

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 リターンワームは避ける素振りもなく直進、そのまま光球に向かいラピスへと噛み付いてきた。光球は呑まれ、彼女の凹凸ある肢体はワームの柔らかい唇に捕まってしまう。

 

「ぐぅ、放せ……です!!」

 

ぐちゅ! ぐちゅ!!

 

「あぐぅ……!! うぁ……んぁぁ……!!」

 

 花びらのような肉壁で咀嚼されるラピス。水音を立てながら絡みつく汚い粘液は肉の温かさに混ざり合い、不快感を増長させていく。幸い噛まれたのは首から股間まで、呑まれる事は避けられたがこれではまともに攻撃ができない。もがく彼女をよそに、ワームはただ柔らかな肢体を味わっていた。

 

「あぁぁぁあ!! 止めろ……です!! こんのぉ!!」

 

「ふぅ……んんん! ああぁっ」

 

 両肩に絡みつく肉、腰周りを抱き寄せる肉、インナー越しから股間に伝わってくる不快な肉、全ての肉がじゅるじゅるとしゃぶりつく。

 

「ガトリングショット!!」

 

 呑まれた腕を無理やり動かし苦し紛れのガトリングを放つがこの不利な体勢では満足に放つ事も出来ない。全ての弾はワームの餌にしかならなかった。

 

「んっ、はぁぁ……んぶぇ!! やめっ、放せ……ぇ……!!」

 

 蠢く肉はまるで触手――飴玉を舐める舌のようにねっとり動き回り、絡み付いていく。そのまま綺麗な小顔も舐め取られ、ギャップある胸も口内でしゃぶられる。

 

「はぁぁ……うぁぁ……ま、まずい……んはぁ!」

 

 それは彼女を弄ぶ行為ではない。純粋な食事だった。それこそ飴から味を舐め出すように、彼女の満ち溢れた魔力を吸い取っていた。ラピスはその事に気づいていたが対策が出来ない。相手は自分の魔力を吸って強化した魔物なのだ。得意魔法では魔物の食事を止められなかった。

 

「はぁ、はぁ……ン……ち、力が……抜けて――。この、まま……じゃぁ……」

 

 このまま勝負が決しようとしたその時、ラピスを呑み込んでいた口を地面へ着け、彼女を解放した。露わになった可愛らしい魔法服は白くネバネバした魔物の悪臭唾液で汚れきっていた。インナーにはべっちょりと、僅かな隙間に流れた液は肌へと、エナメル系の胸当ては液体でより光沢を増している。それら全てがトリモチでも絡み付いたように彼女の動きを阻害していく。

 

「っ、うぅ……気持ち悪い……です。どうしてこいつの魔物はこうネバネバした奴ばっかり……」

 

 身体中に漂う不快感と脱力でしばらく倒れていたが、身体を震わし起き上がるラピス。

 

「くっくっくっ、そうか。そういう事か」

「ぴぃぴぃ♪」

 

 よろけるラピスとは裏腹にカルティクスに頬をすり寄せすっかりご機嫌なワーム。そして余裕の笑みを浮かべながら見下す宿敵。まるで勝利に浸っている素振りに、逆転してしまったこの状況に歯を震わす。

 

「おいラピス、お前はもうこいつの敵じゃないってよ」

「なっ――」

「あのまま呑み込む事も出来たが、それじゃオレの気が収まらないと思い気を利かせてくれたみたいだ。どうだ? さっきまでの事を謝り大人しくついて来るなら――」

「ふ、ふざけんなです! 誰がお前に――!!」

 

 ラピスは激昂しつつもこの状況を冷静に考えていた。彼女が対峙しているのは苦戦しているワームだけではない。後ろには元四法柱、過去にハルティエルとスカイオータムを倒した経験もあるカルティクスが控えているのだ。今の状態で勝機がない事は悟っていた。

 

(ここでボクが出来る最善の選択は、ボクの弱点属性を持つなっちゃんと合流してワームをなっちゃんに倒してもらう事ですが――それは無理そうですね。アキちゃんではこのワームを倒す魔力はないですし、ハルちゃんはハイローズ相手でそれどころじゃない)

 

「お前はバカじゃないから分かっているだろ? この状況に勝ち目がないことを」

「そうですね。正直これはやりたくなかったのですが……」

「ほう? まだ何か手があるのか……」

 

 重い身体に鞭を打ち再びワームへ向かっていくラピス。

 

「でりゃあ!!!」

 

 ラピスの手から放たれた魔法は彼女の身体よりも数倍大きいエネルギーの集合体――今までとは比較にならない程の高出力魔法だった。魔力の風圧でコンクリートの地面が削られていく。

 

「結構吸われたと思ったが……。魔法服の損傷もなく、まだこれだけの魔法が出せるか。やはり貴様を最初の標的にして正解だったよ」

「余裕ぶっこいてられるのも今のうちですよ――はぁあああ!!!」

「なにっ!?」

 

 彼女はさらに手を振りかざすと、魔法球の裏から更なる魔法を放つ。出てきたのは小さい球体だが遥かに輝きを増している。二つの魔法が合わさった瞬間、目の前に太陽が出来たかのような高密度の出力波が出来上がっていた。

 

「バカな! 貴様はどれだけの魔法力を秘めて――っ!?」

「ボクの全身全霊、食らえですよ!!!」

「ぴぃ♪」

 

 周囲一帯が爆音と共に吹き飛んでいく。近くの建物は全て崩壊――隠れる場所もない荒野と化していた。裏通りに日差しが差し込む程の高威力魔法を直撃した魔物はどうなったのか、粉塵に隠れて確認する事は出来ないが――

 

「ふへへ、ボクを解放した事――後悔するですよ」

 

 彼女は疲れた表情をしつつもやり切った笑みを浮かべていた。

 しかし――

 

「ぴぃ♪」

 

 粉塵の中からは建物に近い黒い影と、ラピスの足元を崩す絶望の鳴き声が聞こえてきた。

 しばらくし、鮮明になった視界の先には――全くの無傷であるワームと憎き相手カルティクスが笑っていた。

 

「魔力結晶11個分か。気に入ったぞ」

「あっ……ぁ……」

 

 ラピスの放った渾身の一撃は霧散と吸収のコンボで回避されてしまった。無傷のワームを見てショックを隠し切れないラピス――ではなかった。

 

「やっぱり、吸ってきましたね」

「なに?」

 

 むしろそれこそが本当の狙いだったかのように勝ち誇った笑みを浮かべる。

 

「いくらそいつが魔力を吸って成長するにしても当然限度があるです。ボクの魔力量とワームの魔力量、ボクの分析では10倍程差があると見てます。となれば――」

「ぴぎゅっ!!」

「なっ……!」

 

 突如魔物の容態が変貌する。体内の異物にうずくまり、ねずみ花火のように暴れ始めた。

 

「ぴぎゅ、ぴぎゅぅぅ!!」

「当然高出力の魔力に耐え切れずゲロを吐く。これでボクの勝ちです!」

 

 リターンワームは今までの魔物とは違う、相手の力を利用した魔物。逆を言えば他の魔物よりしっかり作られていないという弱点があった。加えて魔法が得意なラピス・ノートの全力――それこそ四法柱クラスでなければ吸い切る事は不可能だろう。

その盲点を突いた戦法で形勢逆転、ラピスは一矢報いる事が出来たが――

 

(この戦法は出来れば使いたくなかったです。後はどうやってカルティクスの手から逃げつつ、アキちゃんのところへ合流するか……?)

 

 それは決して小さい代償ではなかった。この戦法は諸刃の剣、使用するためには多大の魔力を消費する。これではワームを倒せたとしてもカルティクスは倒せない。だからこそ奥の手でとっておいたのだろう。

 

「ちっ、結局オレが出る羽目になるのか」

「ぴぎゅ、ぴぎゅぅうう……」

「なんてな」

 

ぶっ!!!

 

「へっ、きゃあああああ!!」

 

 ワームには勝利を確信していたラピス。しかしリターンワームの口から吐き出されたのは魔力ではなく大量の粘液だった。まさかワームが反撃してくると予想していなかったラピスはそれをもろに浴びてしまう。

 

「んっ、んあぁあ……な、何で……。えっ……?」

 

粘液の勢いで仰向けに倒れ、スライムのように前面を覆いつくした白濁液に動きを拘束されてしまう。粘着性と凝縮された重さで首を動かす事しか出来ない。

 

「はぁ、んぅうう……ぬ、抜けない……。どうして、どうしてですか?」

 

 そう、揺れる視線には先ほどまで苦しんでいたリターンワームがぴんぴんして見えるのだ。本来なら身体が破裂してもおかしくない程の魔力を浴びたはずなのに――その瞬間、ラピスはようやく自分の失敗に気づいた。

 

「オレがお前の考えに気づかないとでも思ったか? 貴様ごときが考える小細工、ハイローズならともかくオレには通用しないぞ」

「あっ、あぁぁっ……!? カ、カルティクス! お前――!!」

「当然、魔力の総量は気づいていたさ。だからオレがこいつの魔力を吸って魔力を結晶化して吐き出させればどっちも無事ってわけさ」

 

(ま、まずいまずいまずい! まずすぎるです!!)

 

 最後の力を振り絞り、魔物の粘液を凍結させ破壊する。動けるようになったラピスは敵に背を向けるが――

 

ぎゅるるるる!!

 

「あっ、ああぁぁぁぁあああ!!」

 

 弱ってる獲物を逃す狩人はいない。快調にうねるワームにすぐさま追いつかれ巻きつかれてしまった。

 

ミシッ! ミシッ!!

 

「あぁぁぁぁあ!! あがっ!! あぁぁ!!」

 

 華奢な身体を圧迫され、そのまま痛みを吐き出すかのように悲鳴をあげるラピス。綺麗な曲線を描いていた両胸も見事な楕円へと変わっていく。ラピスの目尻から涙が見えるが、魔物は一向に力を緩めない。

 

「あぁぁぁ! いたっ!! 折れちゃう!! 折れちゃう!!!」

 

 元々ラピスは魔法に頼った魔法特化型。魔法がなければ魔法戦士の中で一番脆い身体つき――そこに丸太のように分厚いワームが巻きついて締め上げているのだ。そんなラピスでは到底耐えられる苦しみではなかった。

 

ミチッ! ミチッ!!

 

「がはっ! あっ、あぁ……かひゅ……はぁ、はぁ……」

 

ギチッ!! ギチッ!!

 

「あぁぁあぁぁあああああ!!! あぎゃあぁぁあああ!!」

 

 折れる寸前で力を弱め、呼吸をさせる。そして緩んだところに更なる締め付け。何度も、何度も締め付けラピスを確実に弱らせていく。締め付ける度、ラピスの泣き叫ぶ声が青空へ消えていった。

 そしてラピスが完全に弱ったあとは舌を伸ばし、全身を絡め取る。

 

「んぷっ…ン……んぅ……んぶぅ……」

 

 もはやインナー越しから感じる不快な体温を気にする力もない。

 

「安心しろ。オレの拠点に帰るまでは守ってやる。そいつの腹の中でな」

(ハル……ちゃん……)

 

■ラピスが呑み込まれるルート■→BAD END

 

■正規ルート■

↓  ↓

 

 ラピスが口の中に含まれる直前――カルティクスの視界に黒い影が映った。【それ】に気づいた時にはもう遅く……3メートル以上あるリターンワームの身体は轟音と共に真っ二つとなっていた。

 さらに真っ二つとなった身体は黒い影から放たれた魔法により一瞬で炭と化してしまう。

 

「ぷはっ!!」

 

 ベロの触手から解放され地面に突っ伏すラピスと、黒い影が見えてから3秒足らずで炭となったリターンワーム。あまりに一瞬の出来事――そして、カルティクスは日差しに照らされた影の存在に焦りを隠せなかった。

 

「ば、バカな……! 何故、貴様がここにいる!!」

「ふぇ……。お、お前は……」

 

「全く。本当に薄汚い奴だねあんたは」

 

 ラピスを窮地から救ったのは――先ほどまでハルティエルと交戦していたはずの、ロングヘアーを靡かせる魔物だった。

 

■5■

 

 市街地を抜けた先にある河川敷、辺り一面は地面と芝生のみで隠れる場所は一切ない。小細工無用と言わんばかりの場所でエテナイトと蛇の魔物ベリトアは対峙していた。

 

「あんた、確か魔法戦士最弱のエテなんとかって奴だね。そんなザコが私に勝てると思っているのかい?」

「お前、失礼な奴だなー。勝てると思ってなきゃここに立ってねぇよ。それに――」

 

 10メートル近く離れていた立ち位置が一瞬にして呼吸が届く距離まで詰められる。

 

「ハルが待ってんだ。一瞬で終わらせるっ!」

 

 魔法による身体強化からの爆速ダッシュ、そこから放たれたエテナイトの斬撃は確実に相手の腹部へと命中した。しかし手応えが硬い。

 

「おぉ速い速い。全然見えなかったよ。まるでハエだね」

「なにっ?」

「エテなんとか、魔法による能力は乏しく物理による攻撃がメイン。そして頭はハイローズ様と同じ脳筋。私の嫌いなタイプだよっ!」

「!!」

 

 ベリトアの振り下ろした拳は空を切り、そのまま地面を叩き割った。飛び退き間合いを取った彼女はすぐさま魔法の短剣を構える。

 

「お前が私だったら相手の指示には従わない。ハルティエルと2対2で挑んでいたよ。そういう所もハイローズ様とそっくりだ」

「うっ……」

「それになんだい、露出度の高いその格好はさ。魔法服に守られてない場所が多すぎるじゃないか?」

 

 グサグサと正論を突きつけ、エテナイトの心に攻撃するベリトア。確かに彼女の言うとおり、エテナイトの魔法服は他の魔法戦士よりも露出度が高かった。

 黄緑を基調としたへそ出しタンクトップ、黒のスパッツに黄緑のタイトスカート。それ以外はグローブとシューズしか履いていない。肌色の面積の方が多いのでは……? と思わせる、正に夏にふさわしい格好だった。

 

「いちいちうるさい魔物だな。変身したらこの格好だったんだからしょうがないだろ? それに露出度ならお前だってほぼ裸じゃねぇーか」

 

 対するベリトアも蛇の尻尾と人間の上半身を融合させたような姿で、人間部分には灰色の鱗しか纏っていない。それこそエテナイトに負けないような露出度だ。

 

「くくく、あんた本当にバカだね。これは口じゃない教育が必要みたいだわ。

良いよ、かかってきな。最も、ここからは一方的なリンチになるだろうけどねぇ」

「お前がされる側だろっ!」

 

 エテナイトはダッシュしながら大きく旋回。先ほどの斬撃に回転力と炎を組み合わせた魔法攻撃を放つ。直撃したがそれも通じない――それどころかベリトアは避ける素振りすら見せようとしなかった。

 

「どうする? 今カウンターで殴れたよ?」

「はっ、余裕ぶっこいてられるのも今のうちだぜっ!」

 

 次は身体強化に雷を加えた超速の連撃。雷のように疾く、鋭い動きから放たれる斬撃はより強力なはずなのだが――それもまた岩をカッターで斬ってるような感覚、全く通用していなかった。

 

「んー? 蚊でもいるのかい?」

「っ……なめんなっ!!」

 

 炎を纏った斬撃、雷による超速、全てを駆使しても――それらを組み合わせてもベリトアの身体に傷一つ付けられなかった。加えてベリトアはあくびすらしており、余裕綽々の様子を見せている。

 

「今のうちにいっぱい試しておくと良い。私が飽きた瞬間、そこがお前の最後だよ」

(ダメだ、こいつめちゃくちゃかてぇ。人肌のところも鋼鉄を斬ってるみてぇだ。それなら――)

 

 剣に炎の魔力を溜め込み、そのままベリトアの眼球へと突きを放った。

 

「さすがにここなら――」

 

ガギィ!!

 

 突きの衝撃で吹っ飛んだのはベリトアではなくエテナイト。攻撃した側だった。宝石のように輝く紫色の瞳は何事もなかったかのように尻餅をついた少女を見つめている。

 

「ガギィって……う、うそだろ……。アタシの全力の一撃だぜ?」

 

 あらゆる攻撃を受けても微動だにしないベリトアに手が震える。脳裏にはスカイオータムの言葉がよぎってしまう。すぐさま頭を振り、空いている左手で震えを静止させた。

 

「お前、ここまで試してもまだ気づかないのかい? お前と私は相性最悪なんだよ。私はハイローズ様の部下で一番硬い特性を持っている。お前のチンケな刃じゃ私の身体に傷一つ付ける事は出来ない。

それに属性は炎と雷が得意って言ったところか。そいつらは私が耐性を持つ属性――ほぅら、相性最悪じゃないか」

「ちっ――」

「舌打ちしたいのはこっちだよ。わざわざ呼び戻されて来てみれば、一番のザコを相手にしなきゃいけないんだからさ」

「くそっ――がっ!!」

 

 立ち上がり再度攻撃を放ったエテナイト。危機感から放たれた単調な攻撃は軽々とカウンターを決められ――彼女の腹部に鋼鉄の拳がめり込んだ。

 

「ごほっ!!」

「随分とやわらかいお腹だねぇ!!」

「ごっ! おぶっ! がっ……はっ!!」

 

 棒立ち状態のエテナイトへさらに一発、もう一発と腹部へ拳を叩き込む。そして膝が折れたところに、掌を重ね合わせたハンマーを後頭部へ叩きつけた。

 

「がぁぁあ!!」

 

 攻撃の勢いで割れた地面にうずくまるエテナイト。腹部を押さえながら咳き込み、逆流する胃液を吐き出していた。

 

「げほっ、げほっ……おぇぇ……!」

 

 とても少女とは思えない苦悶の悲鳴にベリトアの表情が歪む。

 

「良いねぇ。ザコならこっちで愉しませてもらおうか」

「っつぅ、なめ……がはっ!!」

 

 ベリトアの攻撃は止まらない、立ち上がろうとしたエテナイトにしっぽフックを――そしてそのまま腰を押さえ、腹部を攻め込む。

 

「ごっ!! おごっ!! あがっ!!! ―――ぅ!!」

「おらおらおらおら!! 動きのないサンドバッグだねぇ!!」

 

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 硬い特性から放たれる魔物の拳。尻尾で腰を拘束されているため威力を逃がす動きも出来ない――拳の勢いがそのまま衝撃波のように襲いかかってくる。数分前までは健康的な肌色をしていた腹部はみるみる内に赤く、そして青くなっていた。

 表情にも光が薄れ始め、口元は咳と嘔吐の連続で汚れ、目元からは呼吸の出来ない苦しみと痛みで涙が零れてくる。

そしてとどめの一撃といわんばかりの、ベリトアの左ストレートがエテナイトの顔面に直撃した。

 尻尾の押さえを抜けたエテナイトはそのまま吹っ飛び、糸の切れた人形みたいなポーズで倒れていた。

 

「なんだい? もうギブアップかい?」

「げほっ、げほっ……あっ、あーーーー!! うぇ……うぇぇぇええ……!!」

 

 ビクンと身体を震わしたエテナイトはさらに嘔吐し、飛びかけていた意識を取り戻す。

 

「ざ……げほっ、げほっ!! ざけ……んな、まだまだ……これから……だ……ごほっ、ごほっ!」

「はん、身体だけは頑丈みたいだね。正に脳筋タイプだ」

 

 それからもエテナイトは――立ち上がりはしたものの、攻撃を当てることすら出来なくなっていた。

 

「ごふぅ!!」

 

立ち上がっては無防備な腹部を殴られ――

 

「あっがっ!!」

 

殴られ――

 

「負け……おぶっ!!」

 

 ひたすら殴られ続けた。

 

そうして数も分からなくなるくらい殴られた頃、エテナイトはベリトアの尻尾に捕まっていた。太ももや腰を巻きつかれた状態でベリトアの眼前に置かれる。

 

「よっわ。このまま絞め殺してやろうか? んっ?」

 

ギチッ! ギチギチッ!!

 

「あがぁぁぁああ!!!」

 

 極太の鱗に締め上げられるエテナイト。今にも骨が砕けそうな勢いで彼女の全身が圧迫されていく。

 

「あっはっはっはっは! もっと泣き叫びな! お前みたいなゴミクズ、それくらいしか価値がないんだから!」

「はっ……あっ! ご……ごの時を待ってたんだよ!!」

 

 グロッキーで満身創痍な彼女の全身から闘気が溢れ出す。

拘束されていない右手を振り上げると全身全霊の魔力を短剣へ溜め込み――

 

「そのバカ笑いした口に風穴開けてやる!」

 

 雷の疾さで腕を振りぬいた。投げナイフとして飛ばされた短剣は見事ベリトアの大口へと入り込んだ。

 

「体表は硬くても、体内はやわらけぇだろ! これで――」

 

カン! ゴクン!!

 

「………………はっ?」

 

 瞬間、エテナイトは自分が崩れていくような感覚を味わった。唯一の勝機だと思って放った一撃は見事に直撃した。いま出来る全力の一撃だった――それが【カン!】だ。

 ベリトアの喉に当たった短剣はまるで金属を叩くように弾かれ、彼女の胃袋へと吸い込まれた

 

「……ぺっ。くっそ不味い魔力だね。これで魔法戦士とか、ガッカリだよお前。やっぱりハルティエルを食べた方が美味しそうだ」

「っ!! ハルには手を――ごほっ!!」

 

 一瞬死をも覚悟したが、ハルティエルという言葉を聞いて光を取り戻す。ここで自分が負けたら、ベリトアはハルティエルの元へ行くだろう。それだけはさせるわけにいかなかった。

しかし――

 

「うらぁ!!」

「あっ、がぁ……ぅ……~~~……」

「さっきまでの勢いはどうしたんだい? あんたが喋れなくなってどうすんのさ? えぇっ!」

「ぶっ――!!」

 

 締め付けから解放されてもサンドバッグに変わりない。今の彼女はベリトアの玩具でしかなかった。グロッキーなエテナイトの髪を乱暴に掴み自分の元へと引き寄せたベリトアは、魔法服をまるで紙切れのように切り裂いた。

 

「あっ――」

「随分可愛らしい乳首じゃないか。んっ――」

 

 露わになった小ぶりの乳房、そこにベリトアの髪として役割を担っている蛇がすり寄ってくる。

そして――

 

ガブッ!!

 

「っ! あぁぁぁぁああああ!!」

 

 綺麗な桜色をした乳首に噛み付いた。

 

「ほらほら、どうするんだい? それともこのまま噛み千切ってやろうか?」

 

ガブッ! ガブガブッ!!

 

 乳首への噛み付きを始動に他の蛇も無防備な肩・首筋・アザだらけの腹部へと噛み付いていく。ベリトアの魔力か――噛まれた部位は徐々に灰色へと変色し、血が固まったように重くなっていた。

 

「あぁぁ……!!」

「体力だけは一人前みたいだが、もう抵抗する力がないみたいだね」

「あっ、あぁぁぁ……ぁ……」

「んっ? おいおい……」

 

ポタ……ポタ……

 

 苦痛と苦しみと恐怖で力の抜けたエテナイト。その瞬間、スパッツからは血液とは違うほのかにアンモニア臭のする液体が漏れていた。太ももを伝って、ベリトアの尻尾へと落ちていく。

 

「バカっ! そんな汚いもの、私につけんじゃないよ!!」

「うっ……ぁ……ぁ」

 

 ベリトアは慌てて髪を離し、彼女を解放した。そのまま力なく倒れ地面を濡らすエテナイト。泣き叫ぶこともなくなった魔法戦士に興味が失せたのか、ベリトアは踵を返し彼女に背を向ける。

 

「はぁー、ほんっと最悪。こんなザコ相手に時間使われるわー、ションベンかけられるわ……。このストレスはハルティエルで発散させてもらおうかね?」

「――っ!!」

 

ガシッ!

 

「あっ?」

「うぅ……うぅぅ……」

 

 そのまま河川敷を離れようとしたベリトアだったが、何かに尻尾を掴まれ動きを止める。顔だけ振り向くと、石化していく身体を動かし、泥と唾液にまみれた歯を食いしばる無様な魔法戦士がいた。

 

「ションベンくさい手で私に触るんじゃないよ。本当に殺してやろうか?」

「うぅ……うぅぅ……」

 

 ボロボロと涙を流しながら必死にベリトアをここに留めようとする。

 

(んっ、あれ? こいつ――振りほどけ……)

『ベリトアかい?』

 

 そんな時だった。ハルティエルと交戦しているはずのハイローズから魔力による通信が入る。

 

「あっ、ハイローズ様。丁度良かった。夏の魔法戦士1匹確保しました。これで――」

『解放しな』

「………………はっ?」

 

 一瞬、ハイローズの言葉が理解出来ず素っ頓狂な声を発してしまう。数回頭をうねらせた後、ようやく聞いた言葉の意味を理解した。

 

「い、いやいやいやいや! 私たちの目的は魔法戦士を捕まえることですよね? こっちは捕まえましたよ! それを解放するんですか!?」

『良いかい? 二度は言わないよ。今回の戦闘は中止だ。ここで魔法戦士を捕らえる事は私が許さないよ』

「えぇ……」

『なんだい? お前、私の言う事が聞けないのかい?』

「! わ、分かりました。夏の魔法戦士を解放して、拠点へ帰ります」

 

 聞いた言葉は理解したが、到底納得出来るような内容ではなかった。それでも通信から流れる威圧感ある声には逆らえず、エテナイトの半端な石化も解いて解放する。

 

「うちの上司がバカで助かったね。まあこれからはずっと家に引きこもってることだよ、ゴミクズ」

 

 そう言い残し、ベリトアは去っていった。エテナイトは気持ちの線が切れたのか、そのまま地面へ突っ伏した。

 

 ……………

 

「だから、あれほど言ったのに――。なっちゃん……」

 

その数分後、エテナイトは助けに来たスカイオータムに回収され一命を取り留めるのだった。

 

■6■

 

『あんた、私をバカにしてんのかい!? 心ここにあらずみたいな戦い方をして、ちゃんと戦いな!!』

『早く――早く行かないとラピスが! ラピスが大変なのっ!』

『ラピス? ラピスっていえば、グレリーグを倒した魔法戦士の力を引き継いで冬の魔法戦士してる奴かい?』

『あなたが来る事を予想してたカルティクスはその隙を狙ってラピスを捕まえようとしてるのよっ!? だから早く助けに行かないと!』

 

 その話を聞いたハイローズは索敵の魔力を張る。そして現在の状況を理解した。

 

『そういう事かい。あのクズ野郎――』

 

 嘆息したハイローズはそのままベリトアへと通信し始め――禍々しい魔力を収束させた。

 

『ここで魔法戦士を捕らえる事は私が許さないよ?』

『ハイローズ?』

『ふん、私は新しい用事が出来た。後は好きにしな』

『どうして……』

『ハルティエル、あんたはアバタイトを倒しグレリーグを互角以上の戦いをしたんだ。今度、そんな腑抜けた戦いをしたら容赦しないよ?』

 

 ハイローズはそれだけ言い残し、ハルティエルの元を去って行った。

 

 そして時は戻り――

 

「何故、貴様がここにいる! ハイローズ!!」

 

 彼女が向かった先は、カルティクスの所であった。リターンワームを瞬殺しラピスとカルティクスの間に割って入る。

 

「私は利用されるのが大嫌いなだけさ。あんたならよく知ってるだろ?」

「ぐっ……! き、貴様……! それで本来の目的であるハルティエルとの戦いも放棄して邪魔しに来たというのか!?」

「悪いかい? 私を利用して魔法戦士を捕らえるなんて事、私が許さないよ?」

 

 カルティクスの計画は9割方予定通りに進んでいた。スカイオータムの足止めも成功したし、ラピスを捕らえる事にも成功していた。さらに力が拮抗しているハルティエルとハイローズが戦う事で、消耗した2人を捕まえられたかもしれない。

 しかし、四法柱のハイローズは自分が想像する以上に愚直――カルティクスの想像を越えていた。

 

「しかしまあ、この場はこれで終了だろう? さっさと拠点へ帰りなクズ野郎!」

「ぐっ!!」

「なんだい? 今ここで私と戦うかい? いいや、お前は戦わないだろう? 負けると分かってる戦いには手を出さない――今回みたいな狡い手しか使えない、最高幹部の恥さらしなんだからさ」

「貴様っ……きさまぁ……」

「ほら、今回は見逃してやるからさっさと尻尾巻いて帰りなクズ! 私が気に入らないならいつでも相手になってやるよ」

「ぐ……ぐぐ……。ふん。良いだろう。今回はご好意に甘えるとしよう。だかハイローズよ、今の言葉、忘れるなよ?」

 

 肩を震わしながら去って行くカルティクス。それを不機嫌丸出しの表情で見送るハイローズ。そして――

 

「な、なんでお前が……ボクを助けて……」

「バカ言ってんじゃないよ。私は利用されるのが大嫌いなだけさ。そして、あいつを利用して捕らえるのも嫌いだ。

 私は真っ向から挑んであんた達を捕まえる。だからその時までにもっと強くなっておく事だね」

 

 それだけ言い残し、ハイローズもその場を去って行った。

 こうして――三勢力の戦いはハイローズの予期せぬ行動により、犠牲者が出る事もなく幕を閉じた。

 

■7■

 

 陽は沈み、夜風が涼しく感じる頃――無事自宅に帰ることが出来たさつきとラピスは浮かない表情をしていた。特にラピスはいつもの元気な姿とは正反対なほど、俯いてしまっている。

 

「身体、大丈夫?」

「はいです、オーブの自然治癒があるので身体はもう大丈夫です。ですが――」

 

 一つ間を置き、ラピスは続けた。

 

「ボク、今回はぐうの音が出ないほど完敗しました。ボクの考えを全てカルティクスに読まれて――。舐めた戦い方もされて、弄ばれて……。ボクは、敗戦続きのボクは……ハルちゃんの役に立てないです」

 

 震える身体でさつきにしがみつく。さつきはそのまま自然にラピスを抱き寄せた。

 

「なーんて言うと思ったですか! ボク、諦めは悪いですよ! 次は絶対勝つです! それで今度はちゃんとハルちゃんを助けに行きますからねっ!」

「ラピス……うん」

「だから少しの間、こうさせてくださいです」

 

 一方、さつき父の部屋――ここは裕子が使わせてもらっている。そこでも裕子としずくが敗戦ムードを漂わしていた。

 

「なっちゃん」

「分かってる。アキはカルティクスと戦ってるラピスよりアタシを助けに来た。分かってんだ……。

でもアキだってアタシの性格分かってるだろ? 仲間がピンチの時、自宅で待ってるなんてできねぇよ」

「そう……だよね……ごめん」

 

 しずくは静かに微笑み――

 

「ほんとなっちゃんは真っ直ぐで単細胞なんだから。別に私はなっちゃんが役立たずとか足手まといとか、そんな事は一言も言ってないよ?」

「アキは本当にそう思ってそうで怖いよ……」

「なっちゃんはまだ強くなれる――。でもそれにはグレリーグの傷を癒してからにして欲しかったんだけど……こんな事されちゃ仕方ないか」

「アキはアタシを励ましたいのか、怒ってるのかどっちなんだ」

「ふふ――どっちもだよ。……なっちゃん、私が回復魔法かけたんだしもう動けるよね?」

「おかげさまでな。本当に助かった、ありがとうアキ」

「それなら問題ないね」

 

 そして――

 

「なっちゃん、私が教えてあげる。なっちゃんが強くなる方法をね――。今度あんな魔物に負けたら承知しないんだから」

 

 

「流石カルティクス様、オレが何とかすると言った言葉通りの活躍! リターンワームをあそこまで使いこなし、ラピスの魔力結晶も手に入った。これでしばらくは魔物生成に困らないですよ! お見事でした!」

「ゲロリク――今すぐ使える魔物を全員集めろ。エレクトロ・ジャック含めて全員だ」

「えぇっ!?」

 

 僅かに科学薬品の臭いが漂うこの一室。本来であれば目的を達成出来たカルティクス勢力が勝利なのだが――とても歓喜とは思えない、むしろぴりぴりとした空気を発していた。

 

「ちょ……。あいつは強いですが色々問題ある魔物ですよ! だから調整するまで封印しておけって言ったのはカルティクス様じゃ――」

「うるせぇ! オレの言うことがきけねぇのか!!」

 

 普段の表情は完全に崩れ、鬼のような形相で殺気を飛ばしているカルティクス。

 

「魔法戦士の前にあいつだ。あの野郎、オレの計画を邪魔して……オレをコケにしやがった! ぜってぇゆるさねぇ。ビチクソみてぇに潰してやる……」

(あー、これはダメだ。完全にキレちゃってる)

 

(ふむ、リターンワームを使っても捕らえることが出来ないとは――。そろそろ潮時じゃな)

 

 そんなやり取りを物陰から見ている老人がいた。

 

 

「あんたらはしばらくここを守ってな。私はちょっと用事が出来た」

 

 そして魔法空間、綺麗な夜空に包まれ魔法の石壁で造られたこの一室ではハイローズと4匹の幹部たちが揃っていた。

 

「やっぱり――カルティクスですか?」

「ああ、あいつは私を利用しようとしやがった。やっぱり魔法戦士より先に殺しておくべきだったね」

「それなら――さっき倒せば良かったじゃないですか?」

 

 ハイローズの返答にいぶかしい表情をした魔物ベリトアが口を割り込ませる。

 それもそのはず――今回ハイローズのした事といえば最大の目的であるハルティエルとの1対1を捨て、エクスプロイット最大の目的でもある魔法戦士の捕獲も捨てたのだ。それどころか結果的に魔法戦士を助けてしまった。

 他者から見ればとても理解出来ない行動だろう。ベリトアに関してはそんな茶番に付き合わされ、骨折り損の働きをさせられたのだ。当然不満しか出てこない。

 

「不服そうだねベリトア。良いかい? グレリーグやアバタイトは魔法戦士と正々堂々戦って散った。なのに私だけカルティクスの目的を利用したんじゃ、あいつらに笑われちまうよ。

 それにあのクズは不意打ちのように倒しても意味がない。真っ向からぶっ倒してこそエクスプロイットの最高幹部ってもんだ」

「そう……ですか」

(バカが――あいつらと同じ事したらてめぇも負けるだろうが。これだから脳筋は大嫌いなんだよ。こりゃもう潮時だな)

「それじゃ私はカルティクスのところへ行ってくる。あんたらはしっかりここを守るんだよ」

 

 明らかに表情に出ている忠誠度――吸血鬼の魔物アトリはハイローズの言葉に目を輝かせ、植物の魔物トリアーチは顔こそ隠れているものの負のオーラがにじみ出ている。ベリトアに至っては最早隠す気がない。

 

「ふふ……ふふふふ……」

 

 そんな中1匹だけ――サキュバスのアリトリーチェだけは不気味に笑っていた。


 

BAD END

 

 ぐちゅり! ぐぽっ! ぐぽぽ!!

 

「んんんーーー!! んむっ!! んぐぅううう!!」

 

 それから抵抗する事も出来ずラピス・ノートは、大きな肉の口部屋へと呑み込まれてしまった。動く肉部屋はぐちゅぐちゅと粘性ある咀嚼音を立てながら、一回、二回、三――六回と揉み解していく。

 

「はぁ、うぁぁ……あっ……ぁぁ……きもち、気持ち悪いぃ……!」

 

 全身が蠢く肉の部屋、足元などはなく全てが地面にもなり天井にもなる魔物の口内。まだまだ魔物は食道へと連れていかない。肉壁のアトラクションで小さな少女を頬で押しつぶし、ベロであちこちをしゃぶりまわし、安定しない動きもベロで絡め取り固定する。

 

「んぶっ、んぇぇ……はぁぁ……ぁぁあ……」

 

 外では夏の蒸し暑さにやられ、今は悪臭粘液サウナのようなアトラクションで揉まれ――すでにラピスは満身創痍の状態だった。それでもまだまだ序の口――今はまだ唾液を飲むように彼女の魔力を飲み込むだけ。

 

じゅる……! ぐちゅ!! じゅるる……

 

「んぶっ……んぁ……ぷぁ……、い、いつまで……はぁ……んぁぁ……」

 

 一本一本が生きてるようにさらさらしていた美しい髪は白濁液でまとめられ、紫を基調とした魔法のエナメルも白色へとコーディングされている。

 しかし魔物も、外で魔物の食事を調整しているカルティクスも気づいていた。

 

 まだまだ彼女の魔力は底を見せていない――満身創痍でも魔力は源泉のように残っていることに。

 

「も……むり……たす……たすけ……んじゅる」

 

 五十六回ほど咀嚼して、魔力を啜っても彼女の魔力は衰えを見せない。魔法服が白色になっているのがその証拠だ。いくらベロで舐めても、肉圧で揉み解しても、破ける素振りすらない。そして白く透き通った肌は美しいまま――火傷一つ見せていなかった。

 

そして――

 

「んっ、やぁあ……ハル……ちゃ……ハルちゃん……!!」

 

ごっくん!!

 

ぐちゅ、ぐちゅる……

 

 身体がぎりぎり入り込む程度――煙突のような食道を流れていく小さな少女。

 

「はぁ、はぁ……んむ……んんっ……はぁ、んぁ……むぅ……んぐぅ…!」

 

動く肉壁と口付けを交わし、胸を圧迫され、擦られ、太ももの三角地帯に肉が入り込んでいく。ぐちゅぐちゅと動く最低速のベルトコンベアーは彼女に愛撫をしながらゆっくり、ゆっくりと進んでいく。

 

「やめる……です、やめ……んぅぅ……。はぁ、はぁ、苦しい、息がつま……んぅぅ。また肉がくっついて……やっめ」

 

魔法服は粘液でびしょびしょになり、ブーツやグローブも表面――隙間から粘液が入り込んでいた。不幸の幸いか、白濁液のドブに浸かったような不快な感触も最早気にならない。それほどまでに思考が混濁し、肉の不快感に意識が集中していた。

 

「ふぅ、ふぅ……んぇぇ……! んぇ……うぇぇ……! だれ、か……助けて……助けて……ください……です!」

 

じゅるる……じゅるる……

 

「ボク、どこまで……んむっ、んんっ」

 

(また肉壁がくっついて……くる……)

 

 そんな時だった。

 

ずずっ!! ずずずずずずっ!!!

 

「!? んっ、んんぅううううう!!!」

 

じゅるじゅる! じゅるる!! じゅるるるる!!

 

「んぐ!! んぐぅうううう!!!」

 

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 ラピスの柔らかな唇を塞いだグロテスクの肉は離れず、そのまま彼女の呼吸と併せ一気に魔力を吸い上げてきた。

 

「んんっ!! んんぅううううううう!!!!!!」

 

 急激な脱力、倦怠感が襲い掛かる。肉の魔力吸収はラピスの体力も――思考も吸い上げていく。

 

「ふぅー!! ふぅー!!」

(やばい、これ……やばいです!! 一気に頭が蕩け――)

「んーーーーんんーーーーーー!!!!」

 

 口内での吸収はいわばカルティクスに従わなかったラピスへのお仕置き――ただの準備運動だろう。ただ苦しめて、ただ弄ぶためのもの――。体内へと移動した今こそが本番だった。か弱い肢体へ肉壁触手が絡みつき、本命の底力をひたすら吸収していく。

 

「んぐっ! んぐううううう!!」

(やめ……やめてぇぇぇ……!!)

 

 もう瞼を上げる力すら出ない。身体は肉に支えられ、唇をむしゃぶる触手に固定され、ようやく直立を維持出来ている。

 助けは来ない。他の魔法戦士たちは自身の戦闘でそれどころではない。そしてカルティクスが魔力を調整しているから、魔物がゲロして吐き出すこともない。思考の光すら肉壁に塞がれてしまう。

 

「んちゅる……んぅ……ふぅう……」

 

 5分ほど経った頃――とうとう纏っていた魔法服が焼け始めていく。スカートの裾はビリビリに破け、ニーハイソックスには穴が開き、チャックが壊れたブーツは魔物の胃へと落ち消化されていく。

 紫のエナメルも溶け、インナーから桜色の乳首が零れる。そこへすかさず二本目の肉壁触手がキスを交わした。

 

「んぁぁ……ふぁぁ……あっ……ぁぁ……」

 

 三本目は綺麗な正中線を描くへそに、四本目はスカートが消え露わになった秘所に、むき出しの背中に――綺麗な乙女の身体にしゃぶりつくそれは機械に接続するコードのような、生体ユニットを連想させていた。

 

「あふ……ぁ……は、ハル……ちゃ……ハル……」

 

 ごくん! ごくん!!

 

「ふぁぁ……あっ、あぁぁ……」

(心臓の音が……聞こえ……これはボ……ク……? いえ……)

 

ごくん! ごくん!

  ごく……ごく……

 ごくん……ごくん……

 

 ラピスの意識が薄れた頃、ようやく触手たちの吸収が落ち着く。ポンプのように動いてた触手は細々と動くだけとなり、先ほどまで押しつぶすように動いていた肉壁にもスペースが出来始めていた。

 肉壁に解放されても触手に拘束されている彼女は胃袋へ落ちることはない。

 

 それは――彼女が触手と同化した事を意味していた。

 

「ぴぃ!」

「吸収が安定するまで合計35分か――。作れた魔力結晶は合計42個。こいつ本当に化け物だな……」

 

 意識を切らさず、ただ魔力を漏らし続ける――魔物へと提供し続ける電池へと変貌した魔法戦士。

 それからもずっと助けが来る事もなく、ワームの中で魔力を吸われ続けるのだった――。