今回は余計な説明もないし、10000文字以内で収めるぞ。(`・ω・´)

11月27日:追記
魔法戦士ハルティエルA 第二話(pixiv)
投稿しました。


約14000文字。

前回と同じくらいやん……。( ゚д゚)

とりあえず仮の状態で更新。
追記:めっちゃあかん誤字してる。三回と四回間違えてる。('、3_ヽ)_
pixivに投稿するときまでには修正します。

追記2:しくった。今さらだけど予約記事で出す必要なかったなぁ。
下書きにしとけば良かったかも……。
今日(25日)は生活リズム修正中で、↑の誤字を修正せずに休んでます。('、3[____]

アスファルトが熱を帯び視界がぼやけそうな暑さの午後――

紫の表皮。ゴブリンの体躯をした魔物【ゲロリク】は日差しの影響を受けない地下の研究所で快適に過ごしていた。

何冊もの本を積み重ね鼻歌を歌いながらくつろいでいる。

 

「カルティクス様、ゲームってご存知ですか? 携帯やテレビというこちらの世界の機械を使って遊ぶ娯楽なのですが――」

 

「ああ、確かスカイオータムがやっていたやつか?」

 

秋の魔法戦士スカイオータム――秋山しずくがこちら側にいた頃よくプレイしていた。人間を利用するための調査を欠かさないカルティクスはその辺の知識もしっかり取り入れていたようだ。

 

「はい。私も最近人間の娯楽を嗜んでいたのですが、これがまたすごく面白くてですね。私もついついプレイしちゃうんですよ」

 

ゲロリクはご機嫌な口調で続ける。

 

「それで今読んでるこの漫画にですね――実際にゲームを体験出来る能力を持つ者がおりまして、これがまた面白いんですよ。領域を使った頭脳戦が――」

 

「くだらん雑談をしている時間はないぞ?」

 

「ひっひっひっ、そうですね。いやはや、その漫画を読んで新しい魔物を閃いたんですよ。ゲームをモチーフにした領域――結界を使って魔法戦士を捕らえる。実はもう造ってあるので、実験も兼ねて魔法戦士にけしかけてもよろしいでしょうか?」

 

「好きにしろ」

 

「ありがとうございます」

 

ゲロリクは口元をゆがめ、部屋の隅で待機していた魔物に合図を送った。GOサインを貰った魔物は外へ飛び出していく。

 

「それよりラピス対策の魔物はどうなっている?」

 

「それがいまいちですねぇ。今回放った魔物もラピス対策を考えてますが、いかんせんラピスは魔法と分析のエキスパート。そして氷耐性のある魔物も通じない。効果はありますが、それだけでは決定打にならないのですよねぇ。どうしたものか……」

 

「ふん。……とにかくだ。近いうち【千載一遇のチャンス】が訪れる。それまでにあの小生意気なガキ対策の魔物を造っておけ」

 

そう吐き捨てカルティクスは部屋を出て行く。見送ったゲロリクは手に取っていた漫画を机に放り、無機質な天井にため息をこぼした。

 

「とはいってもなぁ。サンプル・Nの勝利だって偶然の一種だし……。今回造った魔物も結界に入れば勝利確定だが、そもそも分析優秀なラピスが踏み込んでくれるかどうか――。あの女に弱点なんてあるのかねぇ」

 

「ふふふ、悩んでるようじゃな? なんならワシがラピス・ノートの弱点、教えてやろうか?」

 

「んっ? おまえは――」

 

■1■

 

「暑い――」

 

一番日差しが高くなるこの時間――下に黒のワンピースを着用し、赤に近いオレンジ色をしたワンピース型のローブを身に纏う赤髪の魔法戦士は人気のない裏通りを探索していた。

周囲は建物が多く日光が当たらない場所が多い。とはいえコンクリートや風の熱気が肌にじりじりと焼きつき、魔法服と肌が張り付く不快感を覚えていた。

 

(自分が行くって言ったんだから我慢しなさいよ)

 

「そうだったね。早く終わらせて帰ろうか」

 

オーブから流れてくる声に応えるのは秋の魔法戦士【スカイオータム】。

数十分前、この周囲から魔物の反応を感知した――という情報を聞いたスカイオータムはその魔物を倒すべく動いていた。

 

「でもおかしくない? 何でこんな人気のない場所に魔物がいるんだろう?」

 

実際この場所は変身した姿で堂々と歩けるほど閑散としている。最も魔法空間が展開されてからラピスが人避けの補助魔法を展開していたりするのだが、それすら必要のない程だ。

こんな場所で人間を襲うなんて考えにくい。

 

(そうね、これは間違いなく魔法戦士を標的にしたものだと思うわ)

 

「やっぱりそうだよね。ラピスちゃんに待ち伏せや罠が効かないって分かってるはずなのに、何でまた待ち伏せ型なんだろう?」

 

(それほど実力のある敵なのか、単純に分かってない馬鹿のどっちかじゃない? もしくはまだ調査・実験段階で試してみたい魔物がいるとか? あのあと氷耐性の魔物をけしかけてきた間抜けがいたみたいだし……)

 

サンプル・Nとの戦いから数日、ラピスが見回りしているときあっさりやられた魔物のことだろう。

 

「あはは……前者はある程度考えているけど、後者2つだったら予想出来ない分厄介だね」

 

スカイオータムは苦笑しそのまま探索を再開する。

それから5分程経った頃――ようやくラピスの言っていた魔力反応の場所へたどり着いた。

 

「それじゃリーチェ、――お願いね」

 

スカイオータムが着用している胸元のネックレス――秋のオーブが具現化した紅い魔力の宝石に触れると小さな光が漏れ出し、可愛らしい妖精サイズの魔物が現れる。やや暗い水色の髪を除き、他全てが黒にまとめられたその姿を見ると小悪魔という表現の方が正しいかもしれない。

 

「分かってるわよ。しずくは私の生命線だし、やれる事はやってあげるわ」

 

彼女の名前は【リーチェ】。【無心病事件】でハルティエルと戦い敗北したサキュバスである。敗北後、死ぬ寸前だった彼女はスカイオータムに拾われた。

またサキュバスという種族でありながら巻き角や尻尾はなく、小さな黒い羽根しか象徴出来るものが存在しない。

そしてある事情によりサキュバスが持つエナジードレイン、魔力吸収の能力すら失っていた。彼女の体格が小悪魔サイズなのもそれが原因だ。

力を失い自分から魔力を供給出来ないリーチェはスカイオータムから魔力を送ってもらう事により生きている状態――使い魔に近い関係だった。

 

「しずく、気をつけてね」

 

「うん」

 

そうして秋山しずく――スカイオータムは魔力反応のあった廃墟へと足を踏み入れる。

その瞬間――空間が切り裂かれたような感覚が起き、先ほどまであった魔力反応が一瞬にして消え去った。

 

「なるほど、しずくが予想していた通りね。それじゃ私は私の仕事をしようかしら」

 

リーチェは驚く素振りもなく、そのまま小さな羽を羽ばたかせ空霜市の市街地へと消えていった。

 

 

 

 

「あ、アキちゃんの反応と魔物の反応が消えたです!!」

 

「えっ――」

 

「な、何なんですかこれは……。魔力の反応が【完全に消えてる】。これじゃボクからは感知もサポートも出来ないです」

 

「それって……」

 

「これは結界に閉じ込められた可能性が――ボク、ちょっと見てくるです!!」

 

「アタシたちも探しに行くぞ!」

 

「うん!」

 

■2■

 

「これは――」

 

空間の歪み、全身が浮くような感覚から戻ったスカイオータムはいつもの調子で周囲を見渡す。視線の先、歪んだ世界が晴れた景色は沢山のガラクタや資材が置かれている廃工場だった。

場の雰囲気自体は先ほどまでいた裏通りと同じ、汚れた灰色とコンクリートや壊れたガラクタからくる機械の匂いに包まれている。

しかしこの場所には先ほどまで衣服を張り付かせていた暑さがない。そして先ほどまでは気配すらなかったのに、今は数十人の学生――男たちがいた。外見はYシャツ型の制服を着崩しており、いわゆる不良と呼ばれていそうな容姿をしている。

そして数は20人くらいだろうか? 不良たちの汚い笑い声や興奮がスカイオータムを囲んでいた。

 

「これって、SLFの脂島のステージじゃ……」

 

スカイオータムは場の変化に全く動揺せず、冷静に状況を認識していく。

SLF(スカイ・ラブ・ファイティング)というのは最近流行りの格闘ゲームだ。秋山しずくも裕子やさつきの弟、冬人とプレイしていた

ゲームの内容は至って普通。12人の男女が戦いを勝ち抜き、空の紋章を手に入れ巨万の富や願いを叶えようというごく一般的なゲームである。

脂島というのはそのゲームに登場する人物で、鎖や催涙ガスなど卑怯な手段が売りのキャラクター。いま彼女はその男のステージに立っていた。

つまり、ゲームの世界にいたのだ。

 

「おいおい、いつまでボーっとしてんだ?」

 

「あっ、ごめんなさい。まずあなたを見るべきだったわね」

 

相変わらずトーンの変わらない声で視線の先にいる魔物を見る。

今回の魔物はサンプル・Nよりも一回り小さい、成人男性くらいの体躯をしていた。

体格も発達した筋肉が目立つところ以外は至って普通の人間体型。魔物でありながら破れた短パンを着用している事がより人間っぽさを引き出していた。

 

「ははは。あんた、急にワープしたのに全く動じないんだな」

 

「ある程度ラピスちゃん対策で予想してたからね。でも本当に待ち伏せ型を差し向けてくるとは思わなかったけど」

 

恐怖のない自信に満ちた返答を聞き、魔物の口元が僅かに上がる。

 

「オレの名前は『サンプル・G』。結界に入った者をゲームの領域に転送する事が出来る。あっ、ゲームつってもあれな。ここはオレがイメージした世界、仮想ゲーム機みたいなもんだ。実際のゲーム機に入ったわけじゃないし、ちゃんと現実世界に結界あるからな」

 

(そういった漫画を見たような――もしかしてパクったのかな?)

 

「またこの領域ではお前もオレも『自分の意思で魔力を使えない』。つまりお前のお仲間さんが魔力探知でこの結界を見つけることは不可能なのよ。そして結界に入った途端ワープしたからもう裏通りにはいない。現実世界の裏通りを探してももぬけの殻ってわけだ。ひひひ、魔力も使えない、助けもこない閉鎖空間に閉じ込められた気分はどうよ? さすがに恐くなってきただろ?

お前さんが迂闊に結界入っちゃったせいでよぉ――かわいそうだなぁ。もうお前さんはオレのサンドバッグであり性奴隷確定なんだからよ」

 

(よくしゃべる魔物だなぁ)

 

流暢に自分の能力を話していく魔物。よほどこの能力に自信があるのだろう。

確かに先ほど魔物が言っていた事が本当なら無敵に近い能力だ。魔法が使えない魔法戦士に勝ち目はないだろう。

しかし彼女はそれを聞いても涼しい表情を続けていた。

 

「ははは、あんたやっぱりおもしれぇよ! ここまで聞いても全く動じないなんて気に入っちゃったぜ! 是非ともオレ好みの表情にしたくなったぜ!」

 

「そろそろ始め――」

 

動こうとした瞬間、ようやく彼女の表情に淀みが走る。

 

「ああ、そろそろ始めようぜ。魔法戦士がボコボコのぐちゅぐちゅにされる、嬲り輪姦ショーをな!!」

 

発声と同時にスカイオータムの腹部に魔物の膝がめり込む。風を切る勢いで放たれた膝は彼女を胃を潰すようにめり込んだ。

 

「がっ……あっ……!!」

 

よどみ始めた表情は一気に苦悶の表情で変わる。棒立ちのまま直撃を食らった彼女はそのまま膝を着いた。

 

「言っただろう? もうお前はオレのサンドバッグだって?」

 

魔物の致命的な一撃を皮切りに、スカイオータムの戦いが始まった。

 

■3■

 

「へへへ……」

 

膝を着いてうずくまるスカイオータムの頬を片手で掴み、無理やり立ち上がらせる。

そして痛みを引かせる暇を与えず――

 

「ぐぷっ!!」

 

魔物の右フックが再びスカイオータムの腹部に直撃した。さらに続けて数発、無防備で柔らかい柔肉に拳を叩きつける。

 

「ごふ! ぶふっ!! ぐっ!!!」

 

「ほれほれ」

 

「ぐぶっ……ん!! んぐぅ!! んっ!! ぐぅ……!!」

 

5~6発放った辺りから魔物の左手に彼女の唾液がこびりつく。表情は重いものを踏ん張って持つときのように力が入っていた。

 

「ひゃひゃひゃ、魔法戦士ちゃん。一気に良い表情になったなぁ。まあ最初に壊れちまったら面白くねぇし、これでも手加減してやってるんだぜ?」

 

「はぁ、……あ……」

 

左手の支えを失ったスカイオータムはまるで壊れた人形のように膝をカタカタ震わして棒立ちを続けていた。

 

(なにこれっ、身体が……動かないっ!!)

 

そう、彼女の身体は異変が起きていた。どんなに動こうとしても神経が切れたみたいに全く動かないのだ。痛みを全身へ送らせないために手で腹部を押さえる事も出来ない。

柔らかい肉がポンプのように運ぶ痛みをただただ全身で受けていた。

 

「ほ……んと、結界入ったのは失敗だったかも……。まさか行動の拘束まで出来る結界だったなんて……」

 

何度か咳き込み、ようやく喋り始めるスカイオータム。その発言に魔物はチッチッチッと指を振り、笑みを浮かべた。

 

「ノンノンノン。行動の拘束はしてないぜ? 言っただろう? いまオレ達はゲームの世界にいて、キャラクターとしてここに立っている。つまり、オレ達が動くには『操作してる者』が必要だろ?」

 

「!!!?」

 

自分の意思で魔法は使えない――ようやくその真意を理解すた。

 

(なるほど、だから仮想ゲーム機なのね。そして現実世界にいる誰かが魔物だけ操作している)

 

能力を把握した彼女は歯を食いしばる。

 

(そんなの――本当に無敵じゃない!)

 

「ちなみに魔法コマンドは使わないようにしてるぜ? だって魔法使ったらお仲間さんにバレちゃうからなぁ。それに魔法の使えない魔法戦士なんざ――」

 

空を切ったミドルキックはバキィと音を立て、スカイオータムを吹っ飛ばした。

 

「きゃああ!!」

 

「この肉体だけで十分だからな」

 

「うっ……いたい……」

 

ズザーと音を立て倒れたスカイオータム。しかし息つく間もなく何者かに掴まれ立ち状態を強要される。

 

「なっ――」

 

「げへへへ! 脂島さんの邪魔はさせないぜ!」

「女だ女! うへへへへ!!」

「でけぇ胸しやがって!!」

 

そこには彼女と魔物を取り囲んでた不良たちがいた。彼らがスカイオータムの魔法服を乱暴に掴み、両腕・肩・両足と拘束していたのだ。

 

「いやあぁぁぁ!!」

 

何本ものゴツゴツし、中には手汗を握った興奮状態の嬲り手がスカイオータムに襲いかかる。もちろん衣服越しからでも分かるたわわに実った果実にも手が伸びていた。

 

「やだ、止めて!! んんっ!!」

 

ある者は口を塞ぎ、ある者は腹パンをかまし、ある者が引き寄せたらある者が引き戻す取り合い状態――。

 

「んぐっ!! ぐふぅ!!」

 

そして背中を蹴られ――再び魔物の前へと戻ってくる。

数分前までは綺麗だったワンピース型の魔法服は見事に着崩れ、僅かに破け、シワが寄っていた。

 

「ふっふっふ、良い格好になったな」

 

「っ……ふぅ」

 

スカイオータムには先ほどの不良たちが何をしたのか理解していた――。ゲームステージによる効果だ。画面外に吹っ飛ばされると、ギャラリーの不良たちが3秒間プレイヤーに催涙ガスや色んな攻撃を仕掛け、ダメージ・行動不能状態を与える。脂島というキャラの特性上、女性キャラクターが吹っ飛ばされるとセリフが変わったりするギミックもあった。

もちろん変わるのはセリフだけなのだが、これは魔物の結界――【そういう風】に設定されているのだろう。

 

「それ、もう一度行ってこい」

 

「えっ――あぁぁあ!!」

 

もう一度蹴り飛ばされ、再び不良たちの群れに飛び込んでしまう。

 

「へへへ、よっぽどオレ達に▲▲▲されたいらしいな!!」

「見ろよこいつ! こんだけ巨乳なのにノーブラだぜ!!」

「魔法戦士ってのはスケベの集まりなんだな!!」

 

「あっ! やめ――いや、ああぁぁ!!」

 

今度は衣服の中にまで手が伸び、白のショーツを指で撫で回され、桜色の突起を乱暴に摘ままれる。もちろんセクハラだけではない、掴む――という行為自体が攻撃となって表れていた。

 

■■■■■

 

スカイオータムを引き寄せようとサラサラの髪を掴んでいた男は、不良たちの欲の波にもまれた反動で引きちぎってしまう。

ぶちぃ! という音を立て繊細な髪が地に落ち、不良たちの靴に踏まれていく。

 

「いっ……! いった!! 髪引っ張らないで!! 止めて!!」

 

目尻に涙を浮かべ、必死に訴えるがそんな言葉は届かない。欲望の手がスカイオータムを蹂躙していく。

数秒後再び背中を蹴っ飛ばされ、魔物の方へと戻される。

 

「おかえり」

 

「はぁ、はぁ……つぅ!!」

 

ズキンズキンと警鐘を鳴らす身体と、ピクンと震える2つの突起と下腹部の疼きがスカイオータムを責め立てる。

二回魔物に蹴られた右腕は真っ赤に充血し、今にもアザが出来そうな状態だった。

 

「んー、やっぱりオレがいじめるのはダメだな。あいつらとダメージが違う。すぐに壊れて愉しめなくなりそうだ」

 

「ずいぶん……いやな性格してますね」

 

肩で息をし歯を震わす彼女を心底愉しそうに眺める。それがより彼女の心を沸騰させるが、やはり身体は動いてくれない。

動かないはずなのだが――とうとう彼女が自分から動き出した。

 

「えっ、身体が勝手に――」

 

魔物を引っぱたいてやりたい――そんな気持ちとは裏腹に彼女の足は魔物から離れて行く。しかも後ろ向きで歩いてる状態――ゲームでいうなら後退している状態だ。

 

「まっ、えっ……なんで……やだ……」

 

そう、後退した先にいるのは――

 

ガシィ!!

 

「いやっぁん!!」

 

三度不良の腕に引き寄せられ、今度は鯖折りのように抱きしめられる。

 

「へへへ、今度は自分からきてくれるなんてな! 歓迎するぜっ!」

 

「あぁぁ……!! く、くるしい!!」

 

掴んだ男は豊満な胸に顔を沈め、鼻息を荒くしながら彼女の身体を満喫していた。

裏ではオレもオレと声を立てながら、スカイオータムの膝丈まであるスカートを掴み破いていく。

そして興奮した手はとうとう顔を掴み、【嬲】るという漢字のような板ばさみ状態で締め上げられた。

 

「あが……あぁぁ!!!」

 

身体と顔を逆方向に締め上げられ、間接が軋むような痛みに襲われる。

実際ミシミシと音が鳴り、彼女の口はパクパクと満足に呼吸も出来ない状態……今まで感じたことのない苦しみを味わっていた。

 

ドコォ!!

 

「がふっ!! がふっ!!」

 

また数秒経ち、今度は腹部を蹴られ元の位置へと戻される。タコのように紅くなった身体に必死で酸素を取り込む。

荒い息を立てながら内心彼女はほっとしていた。もしこれがゲームの世界じゃなかったら――もしあのまま締め付けられていたら確実に窒息死していただろう。

 

「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ……!!」

 

「自分からギミックのところへ行くなんて、よっぽど嬲られるのが好きなんだな」

 

「げほっ! げほっ! ふざっ……けないで……! これはカルティクスが動かしているからでしょ!?」

 

成績優秀・頭脳明晰の彼女は何が起きたのか一瞬で気づいていた。この領域はゲームの世界で、自分たちはキャラクター……つまりスカイオータムにもコントローラーはあるのだ。現実世界では今もこうして操縦者が【魔物】と【彼女】を両方操っているのだろう。

いわば彼女は人形劇で繋がれた人形のようなもの――人形師が考えたシナリオを演じるだけのマリオネットなのだ。

 

「カルティクス様はこんな下卑た真似をしない。いま現実世界でオレ達を操作しているのは、オレの【コピードール】。いわばオレの分身だ」

 

「コピー……ドール?」

 

「そう、これこそカルティクス様の秘密兵器にして最大の切り札。素体に入手した戦闘データと魔力を送り込む事によって全く同じ者を複製出来るのだ」

 

睨むスカイオータムを気にせず、魔物は語り続ける。

 

「しかし同じ者を造り出すにはデータ相応の魔力が必要になる。そこでカルティクス様は魔法戦士たちを捕らえ、魔力タンクの道具として扱いコピードールを複製、その力で世界征服しようと考えているのだ」

 

(……この魔物、馬鹿だ。知りたかった情報を自分から話してくれるなんて)

 

秘密兵器を高らかに語る魔物。ここにカルティクスがいたら間違いなく殺されているだろう。身体も悲鳴をあげ危機的状況は変わらないが、想像以上の情報を貰った事により少しだけ心が和らいだ。

 

「そうですか。現実世界にカルティクスがいない事が分かって安心しました。ところで――今のうちに私をカルティクスの元へ連れて行かなくて大丈夫なんですか?」

 

「くくく、そう言ってこの状態から逃げようとしてもムダだ。言っただろう? これから貴様の嬲り輪姦ショーを始めるって」

 

「今なら私を捕まえられますよ? 先に言っておきますがここで私を捕まえなかったら、時間切れになった瞬間確実に殺します」

 

豊かな表情をしているが彼女の口調は戦闘前の状態に戻っている。まるで本当に逆転の秘策を持っているような言いぶりだ。その状態に魔物は眉を動かし、一瞬だけ考え込んだが――再び彼女の身体が不良の元へと動き出す。

 

「っつ!! い、いや――」

 

「ふん、やっぱりな。貰ったデータに秋の魔法戦士はズル賢いとインプットされている。ハッタリかまして結界を解いてもらうつもりだったんだろうが、そうはいかん。オレは騙されんぞ?」

 

ガシィ!!

 

「いやぁっ!!」

 

「ちなみにこの世界は格闘ゲームが元だけど、時間切れで終了なんてないからな? この世界が消えるとしたら、お前が精液まみれになった時だ」

 

「そ、そんな――」

 

「さてと、話が長くなったが――続きといこうじゃないか」

 

「待ちくたびれたぜ! そろそろストリップショーいくか!!」

「ほれ、ナイフだ!」

 

「やだ! 止めて!! いやぁ!!」

 

終わることのない不良たちのリンチ。今度はナイフ、用途不明のスプレーなどの道具を取り出される。

用途不明のスプレーから放たれたピンク色のガスはしっかり彼女の顔に噴きかけられ、ナイフは掴んだ魔法服をビリビリに引き裂いていく。

切り裂かれるたび彼女の透き通った白い肌が露わになっていき――僅かに手元が狂う事もあったのか、何本か赤い線も刻まれていた。

 

「げほっげほっ! いや、いやぁ……!!」

 

みぞおち辺りに付いた衣服の切り込みをグッと掴み、壁掛けのポスターを引き剥がすように一気に引きおろす。

 

ビリビリィ!!

 

「いやぁぁあああ!!」

 

すると衣服は中の黒ワンピースごと一気に破け、程よい肉がつきわずかに赤みが残っている腹部が衆目に晒された。また提灯型の半そでも別の人物に破かれ、今の彼女はへそ出しタンクトップと布目が粗いミニスカート、ズタズタに引き裂かれた下着のワンピースと男を注目させるような格好になっていた。男たちの荒い息を肌越しに感じてしまう。

視線と鼻息で、先ほどの苦しみとは違う火照りが彼女の顔へ集まっていく。

 

「やだ……見ないで……」

 

「すんすん。こんな状態だと巨乳ちゃんの腋の匂いとかも嗅ぎ放題だぜ」

「結構汗の匂いがするなぁ」

 

腕をバンザイのように拘束され、別の男たちが腋へと鼻を近づけていく。ゴツイ圧迫感のある表情と吐息がそのまま刺激となって彼女の中へ入っていくる。

 

(それは、探索時に汗をかいたから――)

 

先ほどまでの罵声や暴力とは打って変わり、今度はピンク色の空気が漂っていた。

マジマジと見つめられる視線が彼女の羞恥心を煽る。男達のこだわりなのか胸とスカートは剥かない。しかし肌に張り付き、視線を釘付けにする彼女の豊満なプロポーションはハッキリと識別出来る。見えないけど見えていることが、より彼女の身体を硬直させていた。

 

じゅるるるる!!

 

「あぁ……んっ!」

 

そんな緊張を破ったのは男ども分厚い唇、触手のようになぞっていく舌だった。

 

「あぁ……そんなとこ、舐めないで! いやぁ、汚い!!」

 

「へへへ、やっぱ女はたまんねぇなぁ」

「オレはこっちだ!」

 

腋の正中線に口を合わせ彼女の汗を吸い上げていく。1人は腋、1人はうなじ、1人はへそと彼女のあらゆる部分を責め立て始めた。身体中を這うナメクジのような感覚――身の毛もよだつ不快感が襲い掛かる。しかし不快とは裏腹に、彼女の身体には火照るような――ビクビクと甘い電流が走り始めていた。

 

「あぁぁ……はっ、んぁぁぁ……や……やだぁ……」

 

(なんでこんな気持ち悪いのに――さっきのスプレー、やっぱりそういうスプレーだったの?)

 

「あっ、あぁ……ふぁぁ……んっ……」

 

「ちっ、もっと弄んでやりたいが時間みてえだな」

 

男たちがある程度責め終わると、背中をトンと叩かれ――再度魔物の元へ戻される。

 

「はぁ、はぁ……んんっ。あっ……こ、こんな……身体が痺れて……」

 

不良に揉まれるたび苦痛と汗で顔をゆがめていたスカイオータム。しかし今回は甘い吐息火照った空気を漏らしていた。紅潮した顔を髪で隠すように俯く。しかしやっぱり完全に隠すことは出来ない。スカイオータムがする女の表情を見て、魔物は下卑た笑みを浮かべている。

 

「男たちに弄ばれて喜ぶ変態め。これでもオレの殺せるのか? んっ?」

 

「はぁ、はぁ……必ず……倒します」

 

「ふん、そこまでくると気にいらねぇなぁ」

 

絶体絶命の状況でありながらなおも強気発言を続ける彼女を鼻で笑い、腕を掴みあげる。

 

「あっ!!」

 

そして背後へと回り、俯きに隠れずっとヒクヒクさせていた突起を二本の指でつねりあげた。

 

「んああぁ!!」

 

衣服の上からでもハッキリ分かる突起――さみしそうに震えていた部位を一気に責められて甘い嬌声をあげてしまう。

 

「こんなに乳首勃起させてよっ! なー、そんなドスケベちゃんがどーやってこっから逆転するんだよ!?」

 

「あっ……はぁぁ……だ、ダメ……! 乳首、つねらないで! んっ、あぁ!!」

 

身体中に電流が走ったスカイオータムは腰を抜かし、魔物へと寄りかかる状態。

手の先にある双丘を激しく、時には優しく揉み、乳悦を与えていく。

乳首も同様、激しくつねり痛みのような快楽で意識を集中させたあと、今度は指でしこり、擦り――とあらゆる手段で彼女を弄んでいた。

 

「はぁ、はぁ……ふぅう……あぁ……ん!! はっ、あぁぁ……や、めて……」

 

「負けを認めてオレの性奴隷になりますって言ったら、楽にしてやるよ」

 

「負け……ない。私は……ひゃん!!」

 

下半身からはショーツ越しから蜜のような液が流れており、オータムから溢れた愛液は太ももへと伝っていき黒とピンクの縞模様をしたサイハイソックスを濡らしていく。

スカートから零れた液はギャラリーの目にも留まる。そんな状態――傍から見れば誰がどうみても感じていると判別してしまうだろう。

 

「これでも負けてないって? んー」

 

破れたミニスカートをめくり、大衆に濡れたショーツを見せ付ける。同時に男達の興奮、獣のような歓声が廃工場を包み込んだ。

 

「や、やだ……いやぁぁ……」

 

「こんなにぐちょぐちょ濡らしてよぉ。それでも負けてないってぇ……」

 

今度はショーツ越しにぷっくりと浮かび上がった割れ目に指を合わせていく。

 

「はぁ、あぁう……やめ、やめて……」

 

指でこすり、今度は布越しから彼女の中をかき回し、焦らすように快楽を与える。触ると面白いようにピクンと震える彼女を見て愉しんでいるようだ。

感じているのを自覚しているのに、肩を震わし目を力いっぱい閉じて否定している。

その光景はもはや戦闘ではない。男達を悦ばせるショーでしかなかった。

 

「ほれ、今度は――」

 

調子に乗り始めた魔物は寄りかかるスカイオータムの身体を反転させ……

 

「んぅうう……」

 

「うおぉ、とうとうちゅーまでされてやがるぜ!」

「もうあの女、てんでダメじゃねーか!」

 

甘い吐息の漏れる唇に硬い唇を重ね合わせた。動けないスカイオータムは魔物の口から流れてくる管のようなベロを難なく受け入れてしまう。まるでAVを生で見てるようなシーンに外野のボルテージも最高潮になっていく。

 

「はむ……んちゅる……んむ……んんっ……」

 

魔物の唾液が身体の中に入ってくる。逆に自分の唾液を吸われ――本来なら不快感でたまらないはずなのに、今の彼女はそれが気にならない程頭が蕩けていた。

歯茎をねぶるようなディープキスを続けたあと、優しく顔を離す。

 

「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ、あふぅ……んぅ……」

 

「女の子が大事にしてるものってゲロリク様が言ってたが……それまで奪われたお前がなおも負けないって?」

 

「はぁ、ぁぁ……んっ……はぁ……」

 

「もう快楽で答える気力すらないか。んじゃ、そろそろ終わらない輪姦ショーを始めるとするか。がはははははは!!!」

 

魔物の笑い声に呼応してギャラリーたちの歓声があがる。中にはすでにズボンを脱いでる者もいた。

そんな罵声にかき消されそうになったが――魔物には確かに聞こえた。

 

「時間切れよ」

 

「…………えっ?」

 

瞬間――世界が歪む。再び足が浮くような感覚に襲われる。

そして景色がハッキリしたその世界は廃工場ではなく、どこかの小屋だった。日差しを浴びた建物の熱もしっかりと感じることが出来る。

この場所には肩で息をするスカイオータムと状況を認識出来ず小屋を見回す魔物――そしてプレイヤーと思われる瓜二つの魔物と、黄緑髪の魔法戦士【エテナイト】がいた。

 

「えっ、何で結界――解除して? えっ?」

 

『ごめんなさいしずく。この子拾ってたら遅れたわ』

 

そしてスカイオータムの脳内に声を発する小さな悪魔リーチェ。どこかに隠れて状況を見ているのだろう。

 

(ううん、ありがとう)

 

心の中で礼を言い、視線を魔物へ向ける。

 

「よお、うちの仲間が世話になったな」

 

「がひゅ、やめ……結界解いた、いじめ……ごきゅぅ!!」

 

プレイヤーと思われるサンプル・Gのコピーはすでにボコボコにされている。もはや虫の息に近い。そんな魔物の首根っこを思い切り掴んでる魔法戦士が眼前にいる。

狼狽する本物、少しの間を置いてようやくその意味を理解出来た。

 

「待って、まさかこの場所がバレたの? 何で、えっ?」

 

「何でとかどうでもいいだろ? てめえ、覚悟しろよ」

 

眉間にしわを寄せ魔物に近づく【エテナイト】。エテナイトの中の人間――【夏陽裕子】は友達思いであり【秋山しずく】の大親友でもある。

それほどの大親友が今まで口では言えないような事をされていたのだ――今の彼女は腸が煮えくり返ってる状態だろう。

そんな彼女の肩を掴み制止したのは――他の誰でもない被害者の秋山しずく、スカイオータムだった。

 

「アキ……止めんなよ? こいつはぜってぇゆるさねぇ」

 

「違うよなっちゃん」

 

「そこから先は、私にやらせて」

 

結界が破られたサンプル・Gは、魔法の戻ったスカイオータムに何も出来ず跡形もなく消え去った。

エテナイトが言うには魔物がかわいそうになるくらい凄惨な光景だったという――。

 

 

■4■

 

「ラピスちゃんを倒すなら魔法を封じる閉鎖空間が一番手っ取り早いと思うの。もちろん他にも……例えば熱を持った魔物とか予想してたけどね。まあ熱を持った魔物なら水属性を使える私が得意だし、今回のような結界だったら私と【繋がれてる】リーチェならすぐに見つけられるから、魔法具による結界だったとしても対応出来る。だから私が行くって言ったの」

 

場所は変わりさつきの部屋、いつもの4人が集合している。先ほどまでの事が嘘のようにケロッとしている秋山しずくは得意げに話していた。

 

「だったら先に言えよなぁ。完全に魔力が消えて大騒ぎしたんだからな」

 

「そうですよ。本当アキちゃんが無事で良かったです」

 

「ごめんごめん。いくら対策しても万が一ってことはあるからね、作戦の内って安心させたくなかったんだ。……でもその分情報は手に入れたよ」

 

魔物が流暢に喋っていた【コピードール】。そんなものが実現されたら、魔法戦士も四法柱も量産出来てしまう。恐ろしい秘密兵器を知った4人に緊張の空気が流れる。

 

「コピードール、そんな話を聞いたら絶対捕まるわけにはいかないですね」

 

「うん。そんな危険なのが出回る前に、カルティクスを倒さなくちゃ」

 

「だな。さっさとカルティクスをぶっ倒して――」

 

緊張の空気が意気込みに変わろうとした瞬間――

 

「それはそうとなっちゃん。なっちゃんは何で変身して外に出てたの?」

 

唐突に流れを一変させた。秋山しずくの表情はいつも以上に真剣で、まるで説教する父親のような威厳が表れていた。場が重い空気に包まれていく。

 

「そりゃアキの事が心配で……」

 

「こないだなっちゃんは回復してもまだ戦えないでしょって言ったよね? そこをカルティクスに狙われていたらどうするの?」

 

「いやでも、今回アタシが助けなかったらアキは――」

 

「違うわよ。本当なら私が助ける予定で――裕子が1人で探索していたから急遽【拾う】ことにしたの。あのままいたら危なかったからね」

 

「なにっ!?」

 

そのとき秋山しずくのオーブから水色の髪を後ろで2つ結びをした小さいサキュバス、リーチェが現れる。

 

「あ、アキちゃん。どうしたですか? 喧嘩は良くないですよ?」

 

しずくと裕子の険悪な空気にオドオドするラピスを無視して続ける。

 

「なっちゃんだって今までの戦いで分かってるでしょ? なっちゃんは魔法能力が弱い物理攻撃タイプ。元々硬い、物理に耐性のある魔物に対して最初から不利な状況なの。最初から魔法が使えないってハンデを背負ってるんだよ? グレリーグと戦ったときだって手も足も出なかったじゃない」

 

「そんなことは分かってる。でも今回だって奴のコピードールを一蹴したぞ。アタシだって戦える」

 

「ううん。今のなっちゃんだと全快の状態だったとしても【魔法戦士対策の魔物は1匹も倒せない】。断言するよ」

 

「ぐっ――!!」

 

明らかに怒りの表情を浮かべる裕子。本当は怒鳴りたい衝動に駆られたが、しずくに言われてる事は正論……だからこそ震える唇を開けなかった。

実際彼女は他の魔法戦士たちより弱い。弱いというよりは特性の時点で不利を背負っている。その不利もあり魔法戦士の中では最弱、つまり一番狙われやすいカモと思われている。それは裕子自身が一番分かっていた。

 

「でもしっかり伝えなかった私も悪いよね。ごめんね……」

 

「いや、分かってる……」

 

「私に考えがあるの。それをやるためにも今は回復に努めて。それまでは魔物と戦わないように。絶対だよ?」

 

「ああ……。アタシは休む」

 

裕子は重い空気を背負うように部屋から出て行った。僅かな沈黙のあとしずくも「私も休むね」と言い部屋を後にする。

部屋にはあわあわしてるラピスと静かに見守っていた春川さつきだけが残っていた。

 

「どどどどーしましょう。なっちゃんとアキちゃん、喧嘩しちゃってるですよ?」

 

「喧嘩じゃないよ。アキちゃんはなっちゃんが傷つくと分かっていたから伝えなかったんだよ。なっちゃんもそれが分かってたから、何も言い返さなかった」

 

終始沈黙を決めていたさつき。それは昔からの大親友である裕子としずくを心から信用しており、理解しているからこその静寂だった。

そんな悟りを開いたようなさつきを見て一人頬を膨らますラピス。

 

「ぶーぶー、ハルちゃん達3人は小さい頃からの親友で良いですよね。なんかこー、言葉はなくても通じ合ってる~みたいな感じで。ボクだけ仲間はずれみたいです」

 

「そんな事ないよ。私はラピスの事も大好きだよ? それに心から信用してる。私達も一緒にがんばろ?」

 

「ハルちゃん……! ボクもハルちゃんがだ~い好きですよっ! えへへ♪」

 

重い空気は夏の空へ抜け出し、朗らかな空気がさつきの部屋を包むのだった。

 

 

場所は変わり、無機質な壁に覆われた一室――相も変わらず意気揚々と口を弾ませる魔物がいた。

 

「今回も大成功ですねっ! まあ何か邪魔が入ってサンプル・Gはやられちゃいましたが、この能力は絶対使えますよ!!」

 

「確かに、ゲームというのも悪くはないな」

 

「ふへへ、ではこちらの方も研究を続けますね――」

 

弾んだ口を抑え、続けてカルティクスに話しかける。

 

「しかし良いんですか? あの裏切り者を放っておいても」

 

裏切り者というのは【スカイオータム】の事だ。無心病事件の時まではカルティクスと協力し魔力提供もしていた。しかし魔法空間で魔法戦士と戦った事により、魔法戦士側へとついてしまう――カルティクス側からしたら裏切られたのだ。。

 

「スカイオータムは自由にしておけ――あいつは必ず【こっち側】に戻ってくるさ……。必ず……な」

 

(カルティクス様、分析力はないけど人間に対する姑息さはピカ一だからなぁ。何か考えがあるんだろうなぁ)

 

思っていても口には出さない、ギョロ目が特徴のゲロリク。

 

「それより次の戦いは最重要だ。ラピス対策の魔物はどうなった?」

 

「ええ、空霜市を調査しているブレインの協力つきですよ。今回は偶然じゃない、ちゃんと自信あります。とはいえ第二候補の対策ですが――。あぁいえ、【天敵】ともいえる第一候補も造ろうとしたんですよ!? ですが――」

 

「いい、理由は分かっている。そのためにもこの戦闘で絶対にラピスを手に入れる必要がある。……次の戦闘はオレも出るぞ」

 

「……えっ?」

 

モニターに映し出されるラピスの戦闘姿を見て、カルティクスは獲物を狙う鷹のような

目をしていた。

 

 

そして魔法空間――ここには多種多様の姿をした5体の魔物が集まっていた。

集まった4匹は美しい黄緑髪をなびかせ、妖艶さと凛々しさを兼ね備えたハイローズに注目する。

 

「やっと全員揃ったね。この馬鹿共が――まずは空霜市にいる魔法戦士からと言ってるだろうが」

 

(アトリの奴、チクったね?)

 

蛇の頭を持ち、蛇の身体を持つメデューサ【ベリトア】は僅かにスーツ姿をしたヴァンパイアへ視線を送る。

 

「しかしまあ――これでこっちも準備は出来た。次の戦い、私も参戦するよ」

 

その一言に場にいる全員が息を呑む。

 

「それとベリトア、あんたもついてきな」

 

「え“ぇっ!?」

 

「なぁに、戦えって言ってるんじゃない。私はあいつらを苦しめたハルティエルと一対一で戦いたい。その邪魔をしないように見張っておくだけで良い」

 

(うわ、退屈……)

 

「ではハイローズ様、私達は――」

 

「ああ、私が留守にしてるあいだ全員で拠点を見張ってな。くれぐれもサボって逃げるんじゃないよ? もちろん、あんたもね」

 

「は、はい!」

 

心を見透かされたような鋭い視線を受け萎縮するベリトア。他の魔物たちも静かに頷く。

 

「ふふふ、あんたと戦う時が楽しみだよ。ハルティエル」

 

三勢力がぶつかり合う時が刻一刻と近づいていた――。

 

 

 

■次回予告■

 

空霜市には魔法戦士と魔物が戦う【四法の伝説】の伝記以外に【八つの怪異現象】という噂が存在する。

【そのレンズに視られた者は身体中全て、心の中ですら狂わされる――】

被害に遭った男性は人の目に触れた瞬間、恐怖で失禁し――

被害に遭った女性は全身に快楽が走りその場で潮を吹いたという――。

怪異現象の一つにそんな伝奇が記されていた。

もちろん被害者が特異体質という可能性もあり、今までは根も葉もない噂でしかなかったが――

 

魔法空間で噂の魔物と思われる魔物が見つかる。

 

「1つ目の魔法空間ではお世話になりました。最もあの時は空霜市に人間がいない状態――そんな状態であなたを負かしても面白くないため一度撤退させて頂きましたが……今回は違いますよ?」

 

「そういえば古本屋で読んだことあるわ。空霜市八つの怪異現象【八怪】……。あなたがその魔物なの?」

 

「あふん! そんな熱い視線で視ないでください! 興奮してしまいます!」

 

「……………」

 

「今からあなたは私と同じ状態になるのです。視線一つで全身に快楽の電流が走る、素晴らしい肉体へと昇華させてあげますよ?」

 

「っ!?」

 

「私の名前は【八怪 シカンジャー】。人間の全てを視線で姦察する魔物――。

魔法空間を全て壊してくれた事、感謝いたします。これで沢山の視線が空霜市に生まれた。あなたの全てを狂わして差し上げましょう」

 

「あなたみたいな危ない魔物――! 私が倒す!!」

 

次回:【全視姦察の魔物】(多分

 

その次が【三勢力の戦い】の予定。